読み終えるまでにかなりの日数を費やしてしまった。 ドストエフスキー自身がシベリア送りにされた時の日記のようなテイストであるため、一つの軸になる物語がない(不自由、希望といったテーマはあるが)ため、没入感が無く読んでいて面白いといった感覚は少…
1冊500頁弱と少し長めの作品。 フォマーが登場するまでは作品の下ごしらえといった感じで少々退屈に感じたが、フォマーの憎たらしさが想像以上だったため、とてもテンポよく楽しめた。フォマーが憎たらしいのは言わずもがななのだが、伯父のわからずやっぷり…
何年か前の吉高由里子主演ドラマの原作(漫画) 30前半の未婚女性3人組の恋愛(笑)と女子会の様子を面白おかしく描いた作品。 主人公に対しては少し甘いと思ったが、この3人組に対する仕打ちは容赦なくてとても面白い。なんなら女性よりも男性の方が気楽に…
主人公アレクセイがルーレットに翻弄される話といえばそれまでだが、賭博に傾倒する過程を脳汁といった陳腐な描写ではなく、人間の精神に対する洞察がとても素晴らしい。宗教哲学や倫理的な思考がばっさり切り捨てられているため、ページ数も少なく、あまり…
2020年頃に出版されたものの日本語訳に川添恵子氏による解説が加えられた書籍。 1章:グローバルプロジェクト 2章:危機後の世界 3章:新グローバル秩序におけるラテンアメリカの重要な役割 特に1章が面白い。各勢力(グローバルプロジェクト)の設立経緯…
まあ、悲劇で終わるの避けられないとは思ってはいたものの、終盤のロゴージンとムイシキンのやり取りは意表を突かれたような感覚になった。ただ、アグラーヤとナスターシャが本格的に対峙するまでは正直退屈だった。 第1部でコミカルな展開で非常に読みやす…
結核持ちで寿命が短いイッポリートの告白が強烈な印象だった。ただ、宗教談義が難解だと思われる。他にも、キリスト教に関する絵画等の知見があればより楽しめたような伏線が張り巡らされているのだが、私自身の知識の浅さをあらためて自覚した。 ナスターシ…
平易で読みやすい第1部とは異なり、婉曲的な表現も多くテンポよく読み進めていくことは難しい内容となっている。直接言及されていない愛人関係や宗教的な比喩表現は解説を見ないと理解するのは困難だった。 個人的に、ナスターシャという個性的な登場人物が…
コメディのような軽快さでとても面白い。個性的な登場人物が多く、把握しやすいためかなり読みやすい。 関わる人がらとにかく愛される主人公ムイシキン公爵は常に正直であり本当の優しさを有するキリストのような存在。心なしか私もムイシキン公爵の人柄に惹…
役所勤めの主人公の一人称で語られる。仕事も恋愛も上手くいかず無味乾燥な日々を過ごす主人公の愚痴日記。学生時代の友達からも腫れもの扱いで、娼婦に説教垂れるどうしようもないおじさん。よく他の物語ではモブにすらなれない存在を主人公にしたなと思っ…
シェイクスピア4大悲劇のひとつ。 父親を殺し王位を奪い、実の母親と再婚した現国王への復讐劇。 テンポがよくてとても読みやすかった。ハムレットはマクベスよりはだいぶ同情できる。悲劇なので終盤でかかわった人物が次々に命を落とすが、ホレイショ―とハ…
100頁くらいですぐに読める作品。シェイクスピアの作品は多くの著書で引用されるため読んでおこうと思った。日本でいう平家物語のような立ち位置? 下記リンクの書籍ではマクベスの設立経緯や訳者の考えが50ページほど書かれている。訳者のマクベス論につい…
2とは違い、ヴェルシーロフが精神的に落ちていき、アルカージーが成長していく。マカールが作中で最も神がかっていた人物(マクシム等を除く)。マカールの死を境にヴェルシーロフの様子がおかしくなっていく(分身)。この辺りは「悪霊」を読んでいないと…
情緒不安定な主人公が語りべとなっているため、とてもとっ散らかっていて人物相関を整理するのに苦労するが、アルカージー、ヴェルシーロフ、セルゲイ、カテリーナ、アンナ、リーザの6人をおさえておけば問題ない。 1とは別人のようになったアルカージー・…
アルカージー(主人公)とヴェルシーロフを中心に展開されていく。ヴェルシーロフは第二主人公といっていいくらいの役割。罪と罰のスヴィドリガイロフ的な。 良心と離れて暮らしたことで屈折した20になっても思春期(中二病)全開のアルカージーに対して、…
ソクラテスの最後に立ち会った人のうちの一人であるパイドンがその様子を借り聞かせるという構造。よってプラトンの存在はぼかされている。 一読しただけで全てを理解するのは不可能であるため、様々な知見を得てから読み直したいと思う。 ①魂の性質 ②魂と肉…
ドストエフスキーの処女小説。 文通のみで物語を展開している(書簡体小説) 主人公のカマールは教育院(現代では児童養護施設)の出であるため、教養が無く、文体も滅茶苦茶であったが、ワルワーラとの文通を通して改善されて行っている。どんなに貧しくて…
悪霊におけるチーホンのもとでは厳しい検閲により、ドストエフスキーが満足のいくように掲載することが叶わなかった箇所。 ①初校版 ②ドストエフスキー校版 ③アンナ版 ②では反革命的要素が多分に含んでいる ③反宗教的要素を多分に含んでいる ⇨保守的な検閲、…
ユーリヤ婦人の催しでの事件を皮切りに、悲劇が加速する。死に過ぎと思ったものの、死んで初めて印象に残った登場人物も多数いたので、ある意味読みやすくなっている。 革命運動に対する批判が強く、徹底的に悲劇にしたのか? 死亡した人物はそれぞれの思想…
・スタブローギンのカリスマ性 ・哀れなピョートルとレンプケー ・スタブローギンのマゾヒズム 学生運動の連中の描写がとてもリアルで、各々理念を掲げるも、操り人形のよう。また、革命にはカリスマが必要不可欠であることをピョートルが十分すぎるほどに理…
神学校への入学、卒業のためにあらゆるものを犠牲にした哀れな少年の物語。元来、心優しい少年の性格が屈折していく様は現代の受験競争で疲弊していく子供にも見ることができるだろう。ただ、受験中の子供にこの書籍を読ませた方がいいかといったら疑問、精…
感想殴り書き ※ネタバレ有 途中まではキャラの整理がしにくかった、ワルワーラ夫人以外の女性が印象に残りにくかったが、リザヴェ―タやマリヤが本格的に話に絡みだしてから整理がついてきた。逆に、後半はリプーチン、シャートフ、ヴィルギンスキーあたりの…
今回紹介するのは、予備校の世界史講師として有名な2人による対談形式の世界史本です。対談形式ということもあり、とても読みやすい内容となっております。 タイトルの通り、日本の義務教育では教わらない、或いは物事の表面だけ紹介されることの背景を解説…
今回紹介するのは手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」(全4巻)です。 第二次世界大戦前のドイツに来ていた日本人記者である主人公が、ひょんなことからアドルフ・ヒトラーの出自に関する秘密を実の弟に託されることから物語が始まります。また、時を同じくし…
感想殴り書き ※ネタバレ有 第5部 とてもテンポよく、作中通して一番読みやすかった。 マルメラードフの法事でルージンをまたも成敗、レベジャードニコフが裏切るのは面白かった。ラスコーリニコフへの仕返しの為にソーニャを陥れるという醜さ全開のルージン…
今回紹介するのは、遠藤周作の沈黙です。 島原天草一揆後の日本が舞台で、日本に残されたキリシタンを救いに行こうとポルトガルから渡航する司祭が主人公の物語です。 ある程度の時代背景を理解している私たち日本人からすると、どうやったってこの司祭の結…
今回紹介するのは保守思想家で知られる西部邁さんの遺書ともいえる「保守の真髄」です。(書籍としては「日本人とは、そも何者ぞ」が最後です) 文明、日本人とは何かということに始まり、世間(西側)でもてはやされる民主主義への疑念、経済面からの考察、…
感想の殴り書き ※ネタバレ有 スヴィドリガイロフ…不気味すぎて真意がつかめない。なんとしてもドゥーニャに会おうとしていることが無ければ少しは信用できそうなもんだが。マゾヒズムはラスコーリニコフに通ずるところがある。 ルージンをこてんぱんにする所…
感想の殴り書き ※ネタバレ有 ラスコーリニコフは自分以外(母、妹等)に対する意見は概ね的を射ている プリヘーリヤ(母)は自分の感性(息子に対する恐怖等)を押し殺そうとするあまり、支離滅裂な発言が多分に見られる。 ドゥーニャ(妹)は賢い。兄に自分…
感想の殴り書き ※ネタバレ有 ①大家との借用書に基づく請求 ②ドゥーニャ(妹)の婚約 ③ラスコーリニコフの犯罪 以上の3つの出来事が主人公の頭を悩ませ、正常な判断力を失った状態で導き出されるとんちんかんな結論と実際の出来事に一喜一憂しているさまがと…