alarm-mezamashidokei’s blog

正直な読書感想文。ネタバレ有。

傲慢と善良 辻村深月

 二、三十代には耳が痛い心理描写がこれでもかというほどにされています。特に婚活で思い詰めている方は見ない方がいいかもしれません。いや、成功したいなら傷つく覚悟で手に取ってみた方がいいのかもしれません。恋愛、婚活に留まらず、自分の意思とは?という哲学的な営みにまでポップに触れることができます。

 失踪した婚約者(女性)を探す過程で、主人公(一人称が婚約者の女性にもなる場面が多々ありますが、便宜的に男性の方を主人公とする)に出会うまでに婚約者が関わってきた人や主人公の周囲の人とのやりとりを通じて、婚約者の人格を鮮明にしていくという構成です。

 個人的には、主人公と婚約者の2人を中心にした物語よりも、場面場面での著者の人間心理の分析(主人公の心理描写を通じて行われる)の方が面白いと感じました。というのも、リアルを追求するあまり、良くも悪くも展開が想像の範疇に留まってしまっているからです。だからといって退屈なわけではなく、現実からかけ離れた突飛な展開がないからこそ、人間が誰しも持っている醜さの分析に納得感があり、読者に響くのだと思います。

 本作で一番好きな場面(事柄?)は、婚約前に主人公が女友達が参加する飲み会で、彼女との結婚は何%考えてると問われ、主人公が70%と答えると、女友達がそれは彼女に70点をつけているということだと変換して主人公をまくしたてたという場面です。この主人公が婚約者に70点をつけたという歪められた事実が暴れ狂うのですが、正直主人公には同情します。容姿が相手にとっての最低基準をクリアしていたら自分のふるまいで残りの30点を埋めることは可能だと思うのですが、いかがでしょう。主人公が元カノ引きずりすぎなのが悪いという意見もあるかもしれませんが、そんな他責するくらいなら相手が何を求めているのか考えて行動すればいいのにと思うのは酷ですかね。まあ、自分を省みない傲慢さと(謙虚だと思い込んでいる)、自分は善良である(実際はただの馬鹿真面目、石頭)であるという自意識が悪魔合体したことによりどうしようもない思考パターンに陥っていることの残酷さが主題でもあるので、とても困難なことなんでしょうね。

 本作の主人公や婚約者のように思い悩むか方々に必要な思考は、課題の分離(自分にどうにかなる課題とどうにもならない課題)ですかね。

 

 以下、独り言・・・

 

 男性へ、結婚してもいいと思える容姿の最低基準を満たしていない女性と関係をもたないようにしましょう。

 女性へ、3か月は待たせましょう。

 

人間関係が楽になるアドラーの教え 岩井俊憲

 アドラー心理学といえば「嫌われる勇気」がベストセラーになったりと耳にする機会は多いと思います。以前どんな思考体系なのか検索した覚えはあるのですが、課題の分離、変えられることだけにアプローチしようといったものだったので、「うん、つまんなそう」といった感じで書籍に手を付けることはありませんでした。

 本作は帯に「少し休憩しませんか」「5月病に効く」といった文言が書かれているだけあって、仕事で忙殺され疲弊している人でも負担なく読める構成にはなっているとは思います。悪く言えば、各項目が短すぎて箇条書きの寄せ集めパワーポイントといった感じではありますが、人間関係でストレスを抱えている人に向けたものなので、アカデミック色が強く定義づけが細かすぎたりなどして読むのに疲れるような作品にならないように配慮しているともとれます。

 褒められた読み方ではないのですが、職場であまりよく思われていない人がとっている言動が本作で列挙されているダメな人との関わり方と見事にシンクロしていることに面白さを見出しました。

 実のところ、私が読みたくて買ったのではなく、近々移動する職場の人へのプレゼントの候補として買ったのですが(お菓子渡すだけでもいいのですが、面白みにかけるというか、、、)、繊細で少し発達障害の傾向がある方なので本作を渡したら煽りととられてしまうかもしれないので困りました。コンビニ人間とセットで渡そうと考えていたのでなおさらです、、、

 

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 ただ、せっかく時間を割いて読書するなら遠慮した無難な作品よりも心を動かすものを読んで欲しいという気持ちは独りよがりの自己満足なのでしょうか、、、

 

 

コンビニ人間 村田沙耶香

 150頁くらいで難解な語彙も使われていないのでかなり楽に読めます。だからといって浅いというわけではなく、著者の魂の叫びがありありと伝わってきました。

 社会における普通から逸脱した私といったテーマは個人的には、中二病感が拭えずあまり好きではない(自分は普通ではないと認識している人物が好きではない、普通ではないことに憧れている様が見てられない)のだが、本作の主人公は共感性周知を抱く隙が無いほどにぶっ飛んではいるものの、合理的な思考をしているので軽快でリズムよく読めるのでストレスが全くかからなかったです。

 主人公と同棲する白羽という恋愛工学にかぶれたミソジニーを女性の作者がここまで解像度高く描けるのはとても恐ろしいと思いました。恋愛漫画でありがちな主人公に好意を寄せる保険ポジの存在を置きがちという点で女性作家の作品は少し残念に思うことが多いのですが(男性作家は男性作家で都合の良い女置きがちで冷めることが多い)、そのポジションがミソジニーだったのでとても面白かったです。まあ、本作の主人公にとって恋愛は全く無価値なものであるので、このような見立ては見当はずれかもしれませんが。

 普通の社会では全くなじめないけどコンビニという舞台では何一つ問題なく過ごせていたと思っていたが、コンビニの同僚も他の普通の社会の一部で主人公には異物の対応をしていたという事実はかなりえげつなくて好きでした。同僚は特に世間一般で酷いとされていることは全くせず、いわゆる普通の反応をしているだけなのに、その普通が主人公を痛めつける展開は無駄な表現が一切なく心地よかったです。

 

わたしが・棄てた・女 遠藤周作

 沈黙を読んだときにも思いましたが、遠藤周作の小説はとても読みやすいです。本作に至っては難解なテーマですらないのでなおさらです。

 タイトルからすると、太宰治の「人間失格」のような物語なのかなと思いましたが、男性の醜くはあるものの、誰しも心の奥底で(何ならだいぶ浅いところで)抱いている感覚を見事に描写しているという点で、ドストエフスキーの「地下室の手記」と通ずるものがありました。

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 主人公の吉岡に棄てられた森田ミツの「自分のせいで誰かが辛い想いをするのが我慢ならない」という心情はとても共感するものがあったのですが、吉岡にあそこまで入れあげる心情はあまり理解できませんでした。親に聞いてみたところ、当時の女性は軽はずみな婚前交渉はせず、結婚相手としかしないという価値観が一般的だったとのこと。なるほど、性交渉後に入れあげるのはわかりましたが、初回デートで好きになった理由が憧れの大学生とのデートがどうの書かれていましたが、森田ミツの自己犠牲の精神だけで十分説明突かないか?と個人的には思いました。もっとカトリック的な思想をもっと押し出した作品にしても楽しめそうですが、「沈黙」で十分ですね。

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なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか ジョナサン・マレシック

 退屈というほどではないが、私がアメリカ人であればより読みごたえを感じたと思います。というのも、人種差別やマイノリティー、教会といった日本人にはあまりなじみのない事柄からのアプローチが多いからです。

 また、コロナ禍において人々の仕事に対する考え方が180度変わったという視点があげられていたが、日本においては多少リモート取り入れたり、YouTubeバブルになったくらいで価値観が根底から覆るような経験をした人はそこまで多くはないと思います。当時大学生であった私にいたっては、例年試験のみで単位を判定する講義がレポート課題に置き換わってラッキーくらいにしか思っていませんでした。(何ならコロナに感謝しています。)

 著者が学者ということもあり、最初の100頁ほどはバーンアウトの定義づけやら歴史やらが長々と展開するので個人的には雑に読み飛ばしても問題ないと思います。

 ここまであまり肯定的な感想を述べてはいないものの、ビジネス書を読み漁り仕事に自己実現まで要求するような人には読んで欲しいかなと思います。まあ、タイトルからしてバリバリ仕事に勤しんでいる人に届かなくて、心を壊してやっと届くというのが現状でしょうが。

 様々な事例をあげて事細かに説明してくれますが、結論趣味を持とうってところに落ち着くので、働きながらも趣味に時間を割くことができている人は読む必要性はそこまで感じません。私自身、仕事終わりに毎日ギターを弾いたりと趣味に時間を割くことができているためそこまで面白みを感じなかったのかと思います。そもそも、仕事に全力投球どころか、仕事自体を効率的に業務を消化してバレずに脳のリソースを温存するゲームだと捉えているため、燃え尽きる要因が全くないので対象外ですね。(はなから仕事に自己実現を求めず何も期待しない姿勢はそれはそれで問題ではあるが)

 

 

死んだら永遠に休めます 遠坂八重

えーー、非常に面白かったです。

個人的な話で申し訳ないですが、転職してからあまり読書に時間を割くことができていませんでしたが、面白い本であれば平日に1日2日で読み切ってしまうものなんですね。

 

話の内容しては、過酷な環境で働いている主人公が、消えてほしいと願っていたパワハラ上司の失踪に巻き込まれるというミステリー小説です。

 

職場の劣悪さと、上司によるパワハラ描写の生々しさが素晴らしく、経験したことないはずなのに、とてつもない不快感を覚えました(らず知らずのうちに、自分の職場の上司の悪口をくちずさんでいたほどにwww)

 

終始嫌な気持ちにさせられるので、精神状態が不安定な時には読むのを控えた方がよろしいかと思います。特に主人公がベテランの警官に主人公が事情聴取されているシーンは胸糞の極みで最高でした。

 

ミステリーの落ちとしては微妙かなとは思ったものの、最後の最後でとてつもない展開が待っているので是非とも最後まで読んでいただきたい作品です。

 

カラマーゾフの兄弟 第4部 ドストエフスキー

〇第10編 少年たち

 病床に付しているイリューシャの様子。コーリャが連れてきた犬(ペレズヴォン)とイリューシャがいたずらで針を飲ませた犬(ジューチカ)周辺のやり取りが、子供の純粋で無邪気な残酷さが相まって面白い。ただ、本筋から逸れた物語であるため少々退屈に感じた。

 

〇第11編 兄イワン

 イワンとスメルジャコフの対峙。召使の料理人に過ぎないスメルジャコフに手玉にとられているイワン。衰弱して正気ではないものの、要領を得ないイワンに対し度々「賢い人とはちょっと話すだけでおもしろい」といって挑発するやりとりが面白い。最終にフョードル殺しを自白し、翌日に自殺したのはなんでだろ


〇第12編

 証人による証言⇨検事イッポリートによる論証⇨弁護人フェチュコーヴィチによる論証⇨判決 という流れ

 兄弟そろってミーチャの父親殺しの無実を訴えるものの、これといった証拠がなく周囲はかなり冷ややか。アリョーシャは修行僧で神がかりだからある程度行動原理は分かるが、イワンは滅茶苦茶。第3部と第4部をかなり期間を開けてしまったために、途中までわけわからなくなった。(傍聴人と似たような感覚で呼んでいたと思う)

 検事の演説は冗長的でかなり退屈でああたのに比べ、弁護人の演説は引き込まれるように滑らかでかなりテンポがよかったものの・・・有罪判決